日本橋風俗射精マニアvs①

「あーーーー」
ニジェールはアガデスの北10km、サハラ砂漠の砂にまみれたイスラム系反政府組織が駐留するバラックで、ゲリラ16人を撃ち殺してできた血だまりの中で俺は射精した。軍支給のアンブッシュ用高分子ポリマーおむつに射精して、俺はこの世の全てに感謝した、あっというまに水分を搾り取られかぴかぴになる自らのザーメンにものすごくありがとう、おれの輸精管を刺激してズルズルした絶頂をくれるためだけに空虚に吐き出されてくれてありがとう、みんな俺の射精のために死んでくれてありがとう。皆が生きててくれるから、俺もいっぱい殺すね、感謝して、感謝の気持ちで、たくさんころすよ、みんなみんな。

ホリック・ジュール(きちがい熱量)堀九十郎は射精マニアだった。一人刺し殺しては射精。二人撃ち殺しては射精、三人括りころしてどこでも射精、十人爆殺していつまでも射精。
彼の自我の全ては射精のために費やされていて、彼は射精のことしか考えられなかったが、代わりに彼は射精に関わらない全てのことを自動的に行うことができた。ろくな仕事をしない自我に代わって超自我、いわゆる本能や反射の部分が雑事も殺人もこの上なく完璧に自動的に誰よりも早く精確にこなすので、九十郎は安心して自我の全てを射精に費やすことができた、精通直後の未熟な弟にモラルや予後も全部ほっちゃっといてとりあえず日本橋の風俗店なみの手コキをしてくれるブラコンのお姉ちゃんみたいな超自我が、彼の射精以外の万事を処理してくれているのだ。
「あーーーーー」
迎えのヘリを待つ最中、真っ白な砂に吸い込まれるゲリラの血を見てぶっかけられた女のふとももみたいだなあと思い、また射精した。ああ、真っ白、いいなあ、俺はこの世の誰でもぶち殺してどこででもぶち抜きまくって、この世を俺のザーメンまみれにしたいなあ、真っ白の、太陽の光がよく照る、原初の地球の生命のスープだ、そしたらおれはガガーリンに、この世に生まれ変わってもらって、また宇宙に行って欲しいな、それで言って欲しいんだ、「地球は白かった」、「地球はイカくさかった」。だよな。俺もそう思うよ。

米軍対サハラ方面部隊26中隊本部に帰投した堀九十郎を、リカルド・デルソス・モルデ大佐は司令室で迎えた。
「堀九十郎、報告します、アガデス北部に潜伏中のゲリラ16名をあーーーーーー」
九十郎はいっぱい撃って殺した感覚を思い出してものすごく気持ちよくてまた射精する。九十郎の報告はだいたいこういう形だ、あと十回報告させたら十回射精するだろう。
「以上です」
漂う栗の花みたいなすえた匂いに鼻をつまむこともなく大佐は聞く。報告なんてもともと必要のないようなものだ、彼の任務は皆殺しとか破壊工作や略奪とか生きて帰ってくれば成功だとわかるような任務ばかりで、殺して気持ちよくて射精して気持ちよかったとか律儀に報告されるよりこういう形のほうがいくぶんかマシかもしれない。
「そうか。ご苦労だった」
「はい、ありがとうございます」
ぼんやりとした表情で敬礼を返す、野良猫を毒エサで駆除したりホームレスの頭をかち割ったり風俗嬢を何度も何度も刺して殺したりだとかろくでもないデータが残ってるばかり(書類には残っていないがそれぞれ三回~五回ほど射精している)のこの日系人の兵士については、そのひと目でわかるろくでもなさ以外についてはほとんど何もわかっていない。
米軍諜報部の技術の粋を用いても懲役刑をくらえるはるか以前の年齢でそれらを日本の警察に見つからないまま完璧にこなしていたことと17の時に米国に来たのがわかっただけだ、その間のことは、諜報部ですら掴めなかった。大佐はデータこそつかめていないものの、九十郎がアメリカに入国した時期と日本の近年の殺人事件の件数の激減とを照らしあわせて、日本における未解決の殺人事件は大体この男がやっていたのではないかと睨んでいる。
買いかぶりではなかった、大佐もこの射精ぐせにうんざりして、死なないかなとちょっぴり期待しながら素手で砂漠に放り出しても、あらゆる難地を越え敵を殺し武器を奪い戦車や戦闘機さえも鹵獲し殺せる限り殺して全く無傷で帰投するのだ。その時、大佐は中東への展開を命じられこの男を預けられた際の、自分の輝かしい戦歴の中で最も難しいミッションになるだろうという直観は正しかったと感じた。人類の敵は砂漠に巣食うせこい反政府組織などではない、この男だ。
「さて、九十郎。大きな仕事だ」
だが大佐は、九十郎を重用していた。どんなにいびつであれこの力は正義の為に、世界の平和のために、必要なのは間違いない。
「今砂漠に建設中の、巨大構造物がある。その名もバロン・サムディ」
大佐がブリーフィングデスクに広げた地図を指差す。ホリック・ジュールがいっぱい殺して射精したアガデスから北に140km、東に30kmほどの地点だ。
「バロン・サムディ(土曜日の男爵)、またの名をゲーデ、ハイチの神話にある死神の名だ。あの世へつながる交差点に立ち、この世に生まれた命の全てを覚えている、大変な賢人だそうだ。周囲には砂と村しか無い地上14階の建設中マンションが、そう名付けられている」
「はあ、マンションがですか」
「そうだ。ひと月前、ロシアとイスラエルのミサイルサイロがハックされている。攻撃側の通信速度が足りず対処は間にあったが、攻撃はかなり正確で、通信速度さえ問題なければ、第三次世界大戦の引き金がひかれていただろう。おそらくその通信はここが出処だ。マンションはただの偽装で、ここはスパコンの製造工場だ。中東のオイルマネーを注ぎ込まれた最高級のスパコンだ、我々が欲しいぐらいだが、どうにもそいつは破壊しないと人類の先行きが心配だ、この世とあの世を繋げる死神の名をつけられたスパコンなど」
大佐はニジェールの海岸線を指さし、新たな紙を広げる。
「ここには通信基地がある。おそらくそう遠くないうちに、奴らはスパコンを移送するはずだ、通信基地に組み込まれれば、通信速度はインマルサット衛星通信とは比較にならない、世界中の兵器にアクセスし自由に操作できるホットラインの出来上がりだ。諜報部が通信を傍受している、ゲリラどもが名付けた分には、ホッティー(売女)ラインだと。この世に生きる全ての命を蕩けさせる、最高にアツい女、だとかいう意味だそうだ。ばかばかしい」
「大佐、一人殺すのでしょうか、百人殺すのでしょうか」
「バロン・サムディには千人はいるとの話だ。全員息の根をとめてこい」
「あーーーーーーーーーー」
ホリック・ジュールは敬礼するのも忘れて濃厚な射精の予感に射精し、精液の匂いを撒き散らしながら部屋を出た。
「明日が実行の日だ。建造中の巨大兵器の攻撃部隊の人員もこちらに回せ」
大佐が副司令に指図する。
「良いのですか」
「おそらくそいつはバロン・サムディの護衛だろう。こちらを壊せば、木偶の坊だ。世界を壊せるスパコンだと? 許さんぞ、歩兵用のヘリを増やせ、戦闘ヘリは少なくていい、兵が潜入し、確実にバロン・サムディを破壊できる体制をつくれ。道は九十郎が作る」
自分が手綱を離せば、どんなことになるかわからないが、手綱を握り続けるかぎりは、九十郎は人類に有益だ。大佐はそう思っているし、事実その予測が当たっていたことを、世界は最悪の形で知ることになる。

日本橋のデリヘル

gatag-00010618